読書感想文:森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』

近況報告

 この1週間、メンタルは問題なかった。季節の変わり目ということもあってか、鼻風邪・喉風邪の症状が出ており、咳や睡眠障害の影響もあって、体力的につらい日々を過ごしていた。

 だが、それらの症状も回復傾向にある。この週末はあまり動かずに、自宅周辺で安静に過ごすことにしている。

はじめに

 今日は、森見登美彦の『シャーロック・ホームズの凱旋』の読書感想文を書く。

 書評と読書感想文の違いについては、”読書感想文:マーティ・O.レイニー『内向型を強みにする』” にて明らかにしているので、興味がある人は読んでみてほしい。

森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋 Kindle版』

僕と森見登美彦作品について

 僕は、森見登美彦先生の作品は、『夜は短し歩けよ乙女』しか読み切ったことがない。『四畳半神話大系』は、途中で読むのを諦めてしまった。

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫) Kindle版
四畳半神話大系 四畳半シリーズ (角川文庫) Kindle版

 森見先生の書く文章と、僕の読解力の相性は、あまり良くないようだ。僕は、森見登美彦作品を読んでいても、内容があまり頭に入ってこないのだ。

 京都という地域に特化(?)している作風のせいか、京都のさまざまな地名がたくさん出てくる。僕は、頭の中で、それらの地理関係をうまく整理できない。

僕は、森見登美彦が書くホームズに興味を持った

 そんな僕が、なぜ再び森見登美彦の新作を手に取ったのか? それは、本書で扱っている題材が、シャーロック・ホームズであるからに他ならない。

 読書感想文:佐野徹夜『透明になれなかった僕たちのために』 でも書いたが、このブログのタイトル『シンとフォンドの冒険』は、コナン・ドイルの『シャーロックホームズの冒険』に影響を受けている。

 子供の頃から、読書が好きだった僕にとって、シャーロック・ホームズは、大人になった今でも、興味を惹かれる題材である。

 熱心なファンではないものの、『四つの署名』『バスカヴィル家の犬』のような長編や『赤毛連盟』『まだらの紐』など、有名なエピソードは、ある程度子供の頃に愛読していた。

 京都をテーマに扱う森見登美彦と、シャーロック・ホームズが出会った時、何が起きるか? これほど興味を惹かれるコラボレーションは珍しい。

「ヴィクトリア朝京都」に悶絶する

 結論から言うと、本書は「森見登美彦が書いたシャーロック・ホームズ作品」ではなく、「シャーロック・ホームズが登場する、森見登美彦作品」である。

 物語の舞台は「ヴィクトリア朝京都」である。ホームズが住まうベイカー街221Bは「寺町通221B」だし、「京都警視庁」には「スコットランド・ヤード」のルビが振ってある。

 森見登美彦ワールド全開である。

森見ナイズされたホームズを楽しもう

 作中には、ホームズやワトソンはもちろんのこと、メアリ夫人、ハドソン夫人、レストレード警部、アイリーン・アドラーなど、お馴染みの登場人物も大勢登場する。

 ドイル版(原作)と比較して、彼らの性格がどのように変更されているか、そこを楽しむのも良いだろう。

 作中において、ホームズはスランプに陥っている。スランプであるが故に、原作では見ることができない、情けない姿を晒すことになる場面が多々ある。森見登美彦作品に、よく出てくる、情けない男をイメージしてもらうと良いだろう。

ホームズシリーズ・森見登美彦作品への理解が必要

 多くのシャーロック・ホームズ二次創作(パスティーシュ)がそうであるように、本書も数多くの原作リスペクト表現が登場する。言い方を変えると、原作を知っていないと、理解できないような展開があるということだ。

 もちろん、初見でも理解できるように、丁寧な補足はされている。とはいえ、ホームズ小説を読み込んでいた方が、本書を楽しむ上では有利に働くだろう。

 同様に、森見登美彦ワールドへの理解も必要だ。僕はこれが欠けていたので、結果として400ページを超える本書を読破するまでに、相当な時間を要した。

まとめ

 読み終えるまでに、かなりの時間と集中力を要したものの、僕は本書を楽しむことができた。ホームズシリーズをある程度読んでいたのと、森見登美彦作品に少しだけ触れたことがあったのが、功を奏した。

 本書は1,800円のハードカバーで購入した。映画1本分だと思えば、その価値は十分にあったんじゃないかな?

 ホームズシリーズが好きで、森見登美彦作品に興味がある人は、ぜひ読んでみてほしい。


今日はここまで。また次の記事でお会いしましょう!

Synk

1980年代生まれ。男性。独身。日本在住。IT企業勤務。

現在の関心はうつ病の回復と投資。そして、幸せに生きること。

うつ病という医療に関するセンシティブな話題を扱うため、匿名性を重要視しています。

このブログから発信される記事は、あくまでも僕の個人的な体験談として受け止めてください。